そのにおい
欲しがってばかり。
意味ばかりを探していた。
そのニオイが教えてくれる。そのニオイが、すべてを肯定してくれる。
ヒトは目で見て、的確に判断する。
脳が、分け隔て、理解して処理をする。
それぞれに意味を持たせ、それで安心する。
すべてのモノに意味を持たせすぎるので、何でも意味が欲しくなる。
それで自分を追い詰めたりする。生きる意味や、自分の存在の意味。
そんなコトを考え出して、ヒトは孤独になる。
今日午前中のやけつく暑さ、そして午後からの雨、そして雨上がりのニオイ。
午前中に灼かれた地面の様々が、雨に打たれ、蒸発して独特のニオイを出していた。
それは子供の頃、嗅いだのと同じニオイ。ニオイの記憶は、過去と今を結びつけてくれる。
そして、様々な物質の粒子が飛び交うニオイは、すべてを肯定してくれる。
いろんなモノが混ざってるのがイイ。自分もその中の一つ。分け隔てのない、物質の粒子達。
視覚や脳の仕事は、分け隔て理解するコト。でもニオイは、混ぜ合わせ、それをつかみ取るだけ。
その時のシチュエーションにより、いろんな混ざり方があり、ニオイも様々。
同じニオイは無いハズだが、ちゃんと記憶は残っていて、遠い昔が思い出される。
意味なんて無くてイイ。存在しているコトがイイ。分け隔てなく肯定され、孤独ではなくなる。
ヒトは、ニオイというモノを、ないがしろにし過ぎたのかもしれない。
混ざり合ったニオイが、救ってくれる。
閉ざされた部屋から出て、新たなニオイに出逢った時、世界は大きく開いて、大いなるモノに抱かれていく。
そのニオイは、肯定。物質の粒子として、自分もニオイになるだけ。意味は要らない。そこに存在して、混ざればイイ。