けしき
始めて来た時の、感覚。
慣れ親しんだ時の、見え方。
同じ景色が、違うモノになっている。
始めて来た時の、あの感覚はなんだろう。
自分の中に地図はない。そこには道もない。
印象に残るモノだけを、とらえていく。
その景色は、なんだか乾いて、現実の物という感覚が薄い。
全てが表面だけの世界。張りぼてのような、そしてより理想的にモノを見せてくれる。
他人行儀で、印象に残るモノ以外は、薄暗い闇のようにも思えて。
それが、そこに住み慣れ親しむと、その景色の中に自分が染みついてくる。
自分の中に地図が出来、この道を進むとどこに行くのか、あそこに行く為にはどうすればイイのか分かるようになる。
始めの頃抱いていた不安はなくなり、同時にありきたりな世界になる。
表面的だった建物も、その内部や中にいるヒトまで、ある程度分かる。
街の悪い所も、見えるようになる。そしてそれは現実として、すぐに諦めるようになる。
その場所その場所で、いろんな悪い所はあるのだろう。
始めて見る景色の中には、そこまで見えてこないのだと思う。
知らない所だけに、勝手に理想を描くコトが出来る。
煩わしさなどはほったらかして、自分で勝手に想像出来る。
住んでみると、結構煩わしいコトが沢山ある。
でも一度きりの場所なら、そんな煩わしさを考えなくてもイイ。
景色の良い所には、住めない。おそらく住みづらいと思う。
煩わしい所の方が、住み良いハズ。なぜならヒトとの距離が近い。
景色が良い所は、ヒトの為のモノが少なく、ヒトが住みやすいようには作られていない。
ヒトを感じない分、景色が良いのだと思う。
景色というのは、ヒトを感じるかどうか。ヒトが含まれるほど、景色の価値は下がる。
でも、ヒトが含まれない所は、住みづらいと言える。住みやすさをとるか、景色をとるか。
景色は、表面。良い景色を求めながら、現実は真逆の環境で安住する。現実の生活と、景色の幻想。