ねこのえがお
知っている。
それを利用している。
ヒトの笑顔と、ネコの笑顔は違う。ネコに笑顔はない。
笑顔はないが、笑顔に通じる顔はある。
目を瞑ってみせる、あの表情。
人間が見せる笑顔とは、まるで違うが、同じかそれ以上の意味を持っている。
あれがネコにとって、笑顔にあたる物だろうと思う。
ネコ科の動物というのは、目がつり上がりとても恐ろしい目をしている。
その恐ろしい目を瞑る。そうするコトで、とても愛らしい表情に一変する。
目を開いたときの緊張感と、目を閉じたときの安堵感。
ヒトの笑顔は、目と口で表情を作るが、ネコは目を閉じるコトで、それを表現している。
自分がそのような顔をすると、相手がどういう思いになるかも、知っている。ネコは知っている。
知っていて、あの表情をする。
チンパンジーなどよりも、よっぽど効果的に、表情でコミュニケーションをとっているのだと思う。
とくに安堵感の演出をするという芸当は、ヒトよりも上手なのかと思う。
そして普段の緊張感とのギャップ。その使い分けも、巧みだと感じさせる。
ヒトの笑顔や、ネコのそれにあたる物。
相手に安心感を与える表現は、決まっていないように思う。
約束事でそのような物が出来上がったのではなく、いろんな表情をしていく内に、見つけていったように思う。
ネコとヒトでは、顔の骨格や、表情筋なども違う。笑顔の作り方が違っても、当然かもしれない。
顔の構造に合わせて、一番効果的な表情を、効果的に使える。
感情の赴くままにではなく、相手がどう思うかを知った上で、その表情を使える。
表情による、その場の空気感を変えるチカラ。それをネコは持っている。
あくまで控えめに。あくまで自分たちの小さな領域の中で。
基本的には関わらない。その方が平和的であると知っている。
ネコの生きる戦略。
ヒトの生きる戦略の中にも、笑顔がある。その為に、表情筋が発達した。
言葉よりも見た目で、相手の感情を読み取れるようになっている。
コミュニケーションの形も、それをする為の振る舞いも、動物毎で違っている。
生きる戦略の上で、関わり合った方が有利。そのコミュニケーションの方法論。
それぞれの工夫を感じさせる。
ネコの笑顔は、効果的。相手がどう受け止めるかまで知った上で、その表情を使える。相手をちゃんと感じているというコト。