くろこ
衝動的に買ってしまう。
スティーブ・ジョブスの魔力。
他の新商品発表会とは、あきらかに違う。おそらく黒い服は、黒子と同じ役割。
計算され尽くされている。
何重にも先回りして、一番良い型を探り当てている。
アップル製品のプレゼンで、スティーブ・ジョブスは上が黒のセーター、下がジーンズで登場する。
アップルのサイトの、商品ビデオガイドでも、黒い服を着ているヒトが紹介しているコトが多い。
黒い服というのは、主役が他にいる、黒子と同じ役割。商品やお客さんが、主役となる。
そのお客さんに対して、ジーンズのジョブズ氏が、プレゼンしていく。コレは大きい。
まるで友達から新商品を自慢でもされるように、気楽に勧められる。
ジーンズなので、受け手は構えない。すんなり入ってくるその中で、気分は高揚していく。
それは友達がモノを自慢してくる時と、まるで同じ。衝動的に欲しくなる。
一番モノが欲しくなる時は、やはり近しい人間から、自慢げに勧められる時。それを上手く演出している。
もしもビジネスベースで、プレゼンやらされてます的に、商品を発表されても、気持ちは高揚しない。
受け手は構えるし、大体このくらいだろうなという、想定をする。発表者について行く感じ。
それはまるで、授業を受けているのに近い。聞き漏らさないようにや、ポイントを押さえるコトに重点が置かれる。
楽しめるようなモードではなく、とても冷静モード。冷めきっている。
そこがスティーブジョブスとの、圧倒的な違い。
でも日本社会で一番気にするのは、身分や立場。まだ古き悪しき伝統が残っている。
その中では、ジーンズで登場するコト自体、受け入れられない。
その点はアメリカの方が、自由で有利なのかもしれない。
とはいえ、スティーブ・ジョブスは、アメリカの中でも異端だとも思う。その中で様々に、工夫している。
日本の商品発表会とは違い、ステージ上でのショーのカタチにしている。
その中では、ジーンズでも許される。そして気持ちも高揚する。衝動的に、欲しいと思わせる。
今更ながら、スティーブ・ジョブスはすごい。よく考え、よく工夫し、計算され尽くされている。
何より、自由な中で一番良いカタチを、貫いている。既成の枠など、ハナから抜け出している。
日本の製品は、魅力的なモノも多い。でも高揚するモノは少ない。プレゼンでのそれは皆無。
欲しくなるのは、紹介記事を読んだ時。結局、欲しくさせるのは紹介記事を書いている、記者のチカラ。
プレゼンの段階ではない。
そこが残念。そこが圧倒的な差。
黒子は工夫。欲しいと思うのはどんな時か。すべて掴んで、演出する。工夫は無限。まだ足りない。