げいのう
華やかな世界。
ヒトが求める要素のひとつを、具現化した世界。
芸能は、ヒトが求めている。
ヒトが求めるその要素とは、何だろう。
芸能とは、日常とは違う異世界。
まるで違う場合もあるし、ほとんど日常と変わらない状況から、ほんの少し違えさせる場合もある。
観ているヒト達は、その異世界を味わって何かを得ている。
音楽ならば、その波長と自分の波長を合わせるコトによって、気持ちを自在にコントロールする。
舞台なら、人生の疑似体験で、心を揺さぶり楽しんでいる。
日常では味わえない状況に、自分を持っていく。それが芸能。
日常と同じでは、芸能は成り立たない。
日常以上の華やかさ、波長、叡智、揺さぶる考え抜かれた展開。
観客はそれを演者に託している。
その期待を裏切り続けると、その芸能は廃れていく。
期待以上でなければ、成立しない。観ているヒトと、演者の真剣勝負。
披露するまで、どれだけ作りあげるのか。普段からメンテナンスをして、良いモノを取り入れ、自在に振る舞えるようにしておく。
華やかな芸能のウラ側は、とても地味で緻密なモノ。
でもそれを感じさせずに、生まれつきで出来るかのように振る舞う。
苦労を見せては、お客さんが楽しめない。そちらに意識が向かい、感情移入が出来ない。
深く広く伸ばした根を隠しながら、華やかな花を見せる。それが芸能。
観客が観ているのは、表面のほんの一部分。
スポットライトの当たっている場所は、蓄積が生んだ一瞬の輝き。
観客は、そこに集まる。そこはとても気持ちが良い場所。
芸能は、観客の為に気持ちの良い場所を用意している。
そこは観客や演者が作りあげる、特別な空間。
芸能は、特別。積み上げられた最上の部分だけを、魅せていく。辛いトコロを、見せては芸能じゃない。