あこがれ
すぐに手に入る。
豊かになって、豊かではなくなってしまった。
すぐに手に入って、あこがれる時間が、消えてしまった。
昔は、あこがれて、恋い焦がれていられたのに。
手に入らない貧しい時は、とても遠回りしてずっと楽しめていた。
でも、最近はなんだか最短距離。昔のあこがれが懐かしい。
あこがれだったり、夢だったり。手に入らないモノを、思い浮かべながら、想い続けていた。
早く手に入れたくて、もどかしくて、くやしくて、指をくわえているだけだった。
欲しいモノを手に入れた時の喜びは、すさまじかった。それが今はもう無い。
叶った時のあの喜びも、どこかへ消えてしまった。
叶ってしまうと、何かがなくなる。豊かになって、あの喜びは失われた。
豊かではなくなってしまった。
あの喜びがなければ、とても虚しい。現在は夢はなくなり、現実がある。
味気ない、つまらない、現実。それに追い立てられて、生きている。
欲しいという想いを楽しむ前に、手に入ってしまう。もうそこにある。この手の中に。
確かに欲しいとは思っている。でも、手に入ってのそれは、実用としてのモノでしかない。まるでつまらない。
叶わなければ、いつまでも夢を見ていられるというのに。
手に入れられないモノなら、追いかけられる。残念だ。豊かさが、あこがれを殺している。