ころぶ
どっち。
どっちか分からない。
どっちに転ぶか分からない。それを、ヒトは一番好む。
良く出るのか、悪く出るのか、そのはざまでヒトは、どうしようもなく不安になり、そしてそれを楽しむ。
損や得の間なら、なお楽しい。
このはざまを楽しむというのは、どの動物からだろう。
おそらく、霊長類。というより、ほぼヒトだけのような気がする。
なぜこれほど、はざまを好むのか。
それは、ずっと気になるから。どちらに転ぶか気になって、結論まで意識を他にやれなくなる。
いろんな想像があっちにこっちに行き、その不安定さが、脳をフル回転させる。
期待と不安の間を行ったり来たり、それを楽しんでいる。
カラダではなく、脳がそれを求める。
分かりきったコトではない。分かりきったコトでは、結果が見えるのでつまらない。
結果が見えない、不確定なはざまこそ、脳はそのチカラを100%使うコトが出来る。
100%使ったとして、わからない。分からない不安定さは、分かるまで続き、その間は期待もしている。
そこには、感情が入り込む隙がある。はざまには、喜びや落胆などの、感情が入り込む余地が大きく空いている。
感情の上がり下がりが、想像しただけで瞬時に切り替わる。喜び落胆が、一瞬で変わる。
どちらに転ぶか分からないので、どちらにも取れる。想像の仕方次第で、ジェットコースターのように上がり下がりする。
この上がり下がりは、どんな経験でも味わえない。はざまでなければ、味わうコトが出来ない。
勝手に上げて喜び、勝手に下げて悲しむ。結果が分からない以上、好き勝手に想像してイイ。
感情の落ち込み、感情の高鳴りは、ヒトが生きている実感を感じさせる。
それでヒトは、それを好む。もちろん絶対の安全圏の中での話。身の危険があれば、そちらが優先されるので、楽しめない。
あくまで身の安全は確保されて、その上で楽しんでいる。
どちらに転ぶか分からない、そのはざま。そこでヒトは、勝手に想像して楽しんでいる。ヒトのチカラを越えた、そして勝手が出来るフィールド、それがはざま。そのはざまを、ヒトは自由に楽しんでいる。